猫の尻尾はバランスをとるだけではなく、尻尾の動きで喜び、悲しみ、怒り、恐怖などを伝える役割があります。
猫の尻尾の付け根には、たくさんの神経が集まっており、後ろ足の動きや排便のコントロールをする神経もあり、猫にとっては急所の一つで、とても大事な部分なのです。
猫の尻尾は脊髄(せきずい)と直結しているため、最も猫が痛みを感じやすい部分でもあります。
たくさんある神経の病気や骨折、肛門近くの分泌液がつまった場合などにはとても痛がります。
痛くて尻尾を上げられないばかりか、動かすこと自体ができなくなる場合もあります。
普段でも変に尻尾を触られるのをいやがりますが、病気やケガのときなどに触られたら急所ですのでとても痛がりますよね。
尻尾を触るときには、やさしく触り、猫とのコミュニケーションをうまくとり、深い絆を結んでいきましょう!
猫の尻尾の働きを理解することにより、猫の健康状態がわかり、病気やケガも見つけることができます。
尻尾の動きで猫の感情表現や気持ちも理解できます。
猫の異変を見つけた場合、自己判断することなく、速やかに獣医さんに診てもらいましょう!
猫の尻尾の付け根にでわかる!猫に起きているトラブルとは?
猫の尻尾の付け根にまつわるトラブルは、怒る・しこり・はげる・膨らむなどの状態を観察することにより、見つけることができます。
それぞれ、どのような原因やトラブルを抱えているか見ていきましょう
怒る
猫の尻尾を触ったとき、なぜ猫は怒ったのか?
こんな経験はありませんか?
猫が怒るのには、次の理由があります。
・神経が集まっていて敏感だから
猫の尻尾には多くの筋肉と神経がつまっています。
とても敏感な器官で、下手に触ると不快に感じて怒こってしまいます
・痛かった
猫の尻尾には多くの神経が走っています。
踏まれるのはもちろん、変に触れられると痛みを感じるでしょう。
・慣れていないから
尻尾を触られることに慣れていないため、怒ることも
考えられます。
子猫の時から慣らしておけば、大丈夫な猫もいますが個体によります。
・警戒心が解けていないから
猫は警戒心が強い動物です。
信頼関係ができていない人が尻尾を触ろうとすると怒ります。
猫の尻尾に触れたければ、十分に絆を深めてからすると良いでしょう。
しこり
しこりは医学的に腫瘤(しゅりゅう)といい、できもののような炎症によってできる場合があります。
また、腫瘍(しゅよう)いわゆる癌(がん)が原因で腫瘤ができる場合があります。
腫瘍の中には、良性と悪性があります。
腫瘍は、しこりのできた箇所や原因によりますが、痛みがあるかないか、触診したときに硬いか柔らかいかなどのさまざまな形態をとります。
悪性腫瘍の場合には、早期診断・治療が重要になりますので、放置せずに自己判断は避け、獣医さんに相談しましょう!
はげる
グルーミング(※)が過度で尻尾をかむのは心因性の脱毛症で、はげる原因となる場合があります。※自分で毛をペロペロとなめて毛づくろいをすること。
治療としては、グルーミングをしていないときに声掛けやご褒美(ほうび)をあげる。
フェロモンやサプリメントによる治療も考えられます。
それでも効果がなければ、抗不安剤や抗うつ剤による治療が必要になります。
膨らむ
猫の尻尾が膨らむ理由は、驚き、威嚇行為、警戒心などです。
それぞれ理由を解説していきますね
・驚き
猫はびっくりしたときに尻尾が膨らみ、背中まで逆立ちます。
神経が過敏になりますので、なるべく驚かさないようにしてください。
・威嚇行為
猫は自分の縄張りに知らない人や猫が入ると威嚇行動を起こします。
尻尾を膨らませて高く立てて全身の毛を逆立てることで、大きく見せようとしているのです。
・警戒心
恐怖からくる警戒心があるときにも尻尾が膨らみます。
このときには膨らんだ尻尾は後ろ足の間に垂れます。
他にもある猫の尻尾にまつわるトラブルとは?
他にもある猫の尻尾にまつわるトラブルでは、くっつけてくる、イボができる、動かない、腫れるなどがあります。
こちらも気にかけてあげなければいけない事があるのでよく見てあげてください。
尻尾をくっつけてくる
猫が尻尾をくっつけてくる理由は、飼い主さんの注意を引きたいとき、とにかく不機嫌なとき、においを付けたいときです。
・飼い主さんの注意を引きたいとき
鳴き声だけでは飼い主さんの注意を引けない場合には、尻尾をくっつけてきて、何かをねだるときに行いがちです。
猫の要求が何なのか見きわめることができれば、猫との絆が深まるでしょう。
・とにかく不機嫌なとき
猫の触って欲しくない場所をなでたり、長い時間なで過ぎたりすると、尻尾でたたくような場合があります。
猫が本気で怒ると嚙みついたり、ひっかいたりする可能性がありますので注意しまよう!
・においを付けたいとき
猫の尻尾の根本から分泌液が出ます。尻尾の根本を自分が気に入った物にくっつけて、分泌液でマーキングして自分の縄張りとします。
イボができる
猫の皮膚にできるイボは、一番多く見られる病気です。
皮膚ガンの一種ですが、ほとんどが良性です。
猫のイボに起因した病気には、基底細胞腫、肥満細胞腫、扁平上皮癌、繊維肉腫、乳腺腫瘍などがあります。
基底細胞腫(※)のイボは頭部や頸部、体幹によく出ます。
はっきりとした原因は不明ですが、遺伝子や日光が原因ではないかと考えられています。
※基底細胞とは、上皮細胞の一種で、基底細胞腫とは基底細胞が腫瘍化した皮膚の良性腫瘍です。
基底細胞腫の治療は、切除手術を行うことがほとんどですが、時間が経過しすぎると手術が困難となることが多いです。
早めの治療をおすすめします。
肥満細胞腫は皮膚に出るものと内臓に出るものがありますが、猫の場合には皮膚に出る場合がやや多いそうです。
肥満細胞腫は猫の体の組織に存在する肥満細胞が癌化したものです。
原因は不明ですが、シャム猫に多いそうです。
治療は症状により、外科手術や化学療法、薬物療法が施されます。
扁平上皮癌は猫の体の表面を覆っている上皮にできる癌です。
治療は外科手術、化学療法、薬物療法が用いられます。
小まめに猫の体をマッサージすることにより早期に発見することができます。
繊維肉腫は体幹や四肢に発生しやすい悪性腫瘍です。
原因は、はっきりとわかりませんが、免疫力の低下やストレスが関係しているようです。
繊維肉腫の治療には、イボを取り除く外科手術と化学療法、放射線療法があります。
乳腺腫瘍は乳腺あたりにイボのようなものができる癌です。
メスのみの乳腺に発生する癌で、良性が2割、悪性が8割です。
妊娠していないのにお乳が張っている、乳首の周りに硬いイボがある場合には注意しましょう!
治療には外科手術と化学療法があり、予防法として避妊手術があります。
動かない
猫の尻尾が動かないのは、馬尾症候群や骨折、分泌液がつまったなどが原因で起こります。
・馬尾症候群
猫の馬尾症候群とは、骨髄の下端から尻尾に向かって伸びている「馬尾」と呼ばれる神経の束に異常が生じた状態のことです。
馬尾症候群の症状は、尻尾の付け根を触ると痛がります。
また、尻尾が動かないとか感覚がないなどの症状となります。
自力でおしっこができず、膀胱(ぼうこう)に水がたまり、排便のコントロールができず、垂れ流すようになります。
馬尾症候群になってしまった猫は後ろ足の動きがおかしくなり、運動を嫌がるようになります。
原因には尻尾の骨折、脱臼のほか、尻尾を引っ張ることで生じた椎間板ヘルニアなどがあります。
馬尾症候群が先天的な奇形の結果として生じている場合には、自然治癒することができないため外科手術が必要です。
馬尾症候群が後天的な外傷によって生じた場合には、神経の機能が自然に回復するまで、尻尾や腰への負担を減らして安静を心掛けます。
・骨折
猫が骨折する原因は、高いところからの落下と交通事故が挙げられます。
猫自身が瞬時に受け身の態勢をとれたらよいのですが、とっさの状況で対応できない場合があります。
猫は高いところよりも低いところからの落下が危険です。
高いところからの落下は落ちる間の時間があり、態勢を整えることができます。
低いところからの落下では、態勢をとる時間がなく、結果として骨折等のケガをすることが多いそうです。
自動車のように非常に動きが早いものに対しては、とっさの対応ができないので交通事故となります。
上腕骨や大腿骨といった比較的に大きな骨の骨折の場合には外科手術による骨の修復を行う場合が多いです。
小規模な骨折、何らかの理由で手術が行えない場合には、骨折した部分を癒合(ゆごう、※)するようにギブスをつけます。
※離れていた骨、皮膚や筋肉などの組織がくっつくこと。
腫れる
猫には肛門の左右に肛門嚢(こうもんのう)という袋があります。
肛門嚢は、肛門腺でつくられる分泌液を溜めている場所です。
肛門嚢が腫れることがあります。
原因は、肛門嚢がつまって炎症を起こしているからです。
肛門嚢の治療は、溜まった分泌液を外に出すことです。
重傷でない場合には、肛門嚢をやさしく絞って、たまり過ぎた分泌液を排出させます。
肛門嚢の出口がつまっている場合には、細いカテーテルなどで詰まりを取り除いたり、皮膚と肛門嚢を切開して排出させることもあります。
炎症を抑えるために抗生物質や消炎剤の薬を投与します。
肛門嚢の分泌液が溜まった場合には自分で絞り出せます。
自信がない場合や重症化しているときには、ちゅうちょすることなく獣医さんに診てもらいましょう!
まとめ
猫の体調を尻尾で見抜く方法、尻尾の付け根を触ると痛がる理由については、お解りになったと思います。
猫の尻尾は、体のバランスをとったり、からだを温めたり、マーキングに使ったりするほか、猫の感情が良く表れる部位です。
特に尻尾の付け根には、たくさんの神経が集まっており、猫の動きをコントロールする急所であり、猫の大事な部分なのです。
猫が異常に痛がる、急に痛がるようになった場合には、すぐに獣医さんに診てもらいましょう!
猫を室内で飼う場合には、ドアを閉めるときに猫の尻尾を挟まないように注意してください。
尻尾の付け根を触ったり、たたいてもらうことを好む猫もいますが、くれぐれも強くたたかないでください。
猫は尻尾で喜び、悲しみ、怒り、恐怖などの感情や気持ちを伝えますよね。
猫が尻尾をピンと立て、近づいてきたら「あなたが大好き!」のメッセージです。
猫はご機嫌で、ピンと立てた尻尾の先端を小さく震わせていたら、さらに上機嫌のサインです。
猫とのコミュニケーションを大切に、子どもさんやお孫さんのように、愛情たっぷり育てましょう!
きっと、可愛い猫ちゃんは、尻尾をピンと立て、尻尾の先端をフリフリしながら、頻繁にあなたへ駆け寄ってくるでしょう。