体罰の法律上の責任とその罰則とは?
兵庫県宝塚市の中学校で柔道部の顧問教諭が、生徒に暴行を加え、逮捕されるという事件が発生しました。
この事件で、教諭は傷害罪に問われています。
では、体罰は法律上どのように扱われているのでしょうか?
体罰は、学校教育法第11条にて、以下のように明確に禁止されています。
学校教育法第11条
校長及び教員は、教育上必要があると認められるときは
監督庁の定めるところにより、学生、生徒及び児童に
懲戒を加えることができる。
但し、体罰を加えることはできない。
法律上禁止されている行為をした教師には、法律や規則にもとづき、体罰の内容によって、戒告・停職(または減給)・免職などの処分がなされます。
尚、学校教育法は公務員である公立教師に適用されますが、私立の学校においても、概ね公立の基準に沿って就業規則が定められています。
また、悪質な体罰については、刑事告訴により、暴行罪や傷害罪により刑事上の責任が問われる場合があります。
宝塚市の柔道部顧問教諭のように、逮捕される可能性もあるのです。
この場合、傷害罪が認められれば、15年以下の懲役、または50万円以下の罰金が刑罰として科せられます。
一方で、学校教育法11条では、「学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。」と明記されています。
双方の認識の違いで、体罰と懲戒の境界線が、あやふやになる場合が大半といわれています。
そのため、指導の延長(懲戒)だという学校側の主張により、体罰が教育論にすりかえられている可能性も否定できません。
では、もう少し詳しく説明します。
学校現場での体罰根絶に向けた取り組みとは
2012年に大阪市立桜宮高校のバスケットボール部の体罰自殺の問題を受け、全国でも多くの体罰問題が明るみに出ました。
文部科学省は、体罰の実態調査の結果をうけ、2013年8月に、体罰根絶に向けた以下の取組の徹底を通知しています。
1.体罰の未然防止
(1)体罰禁止
(2)組織的な指導体制の確率と指導力の向上
(3)部活動指導における体罰の防止のための取組
2.徹底した実態把握及び早期対応
(1)体罰の実態把握
(2)報告及び相談の徹底
(3)事案に応じた厳正な処分等
3.再発防止
上記の通知を受けて、現場では、研修制度を充実させ、体罰の背景や理解、ケーススタディー、体罰防止チェックシートの活用などといった、様々な取組を、毎年行っています。
また、全国の各自治体の現場では、ペップトークやアンガーマネジメントなどの研修を、指導のスキルアップを図るべく、積極的に行っているところもあります。
体罰で従わせない!〜適切な対処のための怒りのコントロール〜
体罰根絶のために、指導力や体制を整えることは、とても大切です。
それと同時に、自身の怒りのコントロールをすることも重要な課題のひとつです。
教育現場では、指導する生徒の背景に、問題を抱えている可能性があるからです。
本質を見抜けないまま、懲戒的な指導を行うと、間違った方向に生徒を導いてしまいます。
そこで教育現場では、アンガーマネジメントを研修に取り入れています。
教師が自身の感情をコントロールすることによって、生徒と向き合い、よりよい解決に導くことを目的としているのです。
アンガーマネジメントとは、イライラや怒りといった感情を、予防し制御するための心理療法プログラムです。
教育現場だけでなく、企業などでもハラスメント対策として、積極的に研修が取り入れられています。
カッとなったりして出る衝動的な言動や行動を抑制し、適切な問題解決や、コミュニケーションにつなげるための手法といえます。
怒りのコントロールは、心の余裕にも関係しています。
学校における職場環境の体制づくりと併せて、取り組まなければならない課題といえます。
まとめ
体罰を根絶するために、学校現場では、様々な取組をしていることがわかりました。
しかし、体罰のニュースを聞くたびに、まだこんなことやっているのかと、残念に思います。
生徒はこうあるべき、こうしなければならないという思考が、相手を一方的にコントロールしようとしてしまうのでしょうか?
思春期の難しい時期の生徒を指導するのは、様々な支援や配慮が必要です。